先日の記事で、身体の見方の使い分けが大切という旨の話をしました。
先日の記事はこちら
では実際のセッションではどういう風に使い分けをしていくのでしょう。
「膝が痛い」という実例を用いて説明をしていきますね。
膝の痛みは膝にあるのかを観る。
まず、問診をしていくにあたり聞いていくことは次のようなチェックリストです。
- 膝に器質的な問題が存在するか。
- 膝が痛くなった前後の生活習慣はどうであったか。
- 痛みに波はあるか。それは時間帯で違うか。
一つひとつ項目を詳しく見ていくことにします。
膝の痛みが、器質的な問題から来るかどうか。
要は「外傷によってその痛みが発生したのかどうか」という視点です。
例えば
- 膝を強打して膝の骨や関節、靭帯の組織になんらかの損傷がある
- 膝関節に関わる筋肉に、肉離れ等の損傷がある
- 膝関節に関わる筋肉の、一部だけに過剰な疲労がある。
といった具合です。
こういった場合、私は西洋的な見地に立ちます。
こちらの見地に立った場合、考え方としては「異常」を「正常」にするという考え方です。
評価としては「客観的」な評価を下します。
要は
- 明らかに損傷が目立たなくなった。
- 関節の動かしやすさ(可動域)が回復してきた。
- 過剰な疲労が取れてきた(触ると柔らかくなった)。
こういった絶対的評価でお客様の状況を把握、その状況に応じたトレーニングやケアをしていくわけです。
膝の痛みは内側?外側?そしてそれは”いつ”?
外傷で無いことが分かった場合には、問診は続いていきます。
具体的に膝のどの辺がどんな風に痛むのかということです。
内側の場合、「立ち方の改善+しゃがみ方の改善」で治ってしまうことがあります。
ので、ここでも客観的な評価で見ていく形になります。
また、西洋的な見地に立つケースは
- いつも筋肉や関節が痛む感じがする
という時です。逆に東洋的な見地に立つ場合は
- 調子の良い時と悪い時がある。
- 神経痛的な、ピリピリとした感じを伴う場合
といった時です。この場合には先述のチェックリストの「生活習慣」や「いつ」について詳しく聞いていきます。
ここからは実例を紹介しながら膝の痛みの改善を実況してみる。
Kさんは50代の男性。外回りのお仕事をされている方で、右膝の痛み改善、そして筋力アップしたいという要望で受けに来てくださいました。
まずは器質的な問題のチェック。
よし、器質的な問題は無さそうだ。となると西洋的な処置では無さそうだな。
いつから痛みますか?
最近痛み出しました。
痛みに波はありますか?
昼食後歩くと痛いことが多い気がします。
なるほど、そうなるとこれは陰陽五行で観方を説明すると腑に落ちるかもしれない。
了解です。では、ここ(足の中指)を押すと痛いですか?
痛いです。
やはり。
この後、なぜそうなったかを説明、それを改善するマッサージ、エクササイズを1つずつ実施しました。
もう一度しゃがんで、痛みをチェックしてもらえますか?
あ、全く痛く無いです。立ち上がるのも楽になりました。
あー、一安心。
なぜそうなったのかを納得すると人間は意識が変わり、身体が変わる。
ここでもとにした考え方は、昔から伝わる「陰陽五行」の考え方です。
その昔、東洋人がこの世の中の事象を捉えようと陰陽に物事を分け、さらにそれを木火土金水という5つの構成要素に分けて 複雑な物事までもを捉えようとした思想です。
ここでその五行を使うのですが、Kさんが痛みを訴えていた場所は「胃」の流れに関わる場所。
「胃」は「脾」とつながる場所ですので、五行で言えば「土」という性質になります。
Kさんはその体格や顔立ちを見ても「土」が旺盛な感じが。
その「土」のエネルギーの変動が今回の膝の痛みを招いたと「観じ」ました。
そして実際それが改善した。
人の身体って、そういうものなんだと痛感する毎日です。
まとめ
結局、健康って主観的なものです。
だから、客観的な基準をもとにしてしまうと、それは「他人の健康」を生きていることになる。
WHOが健康の基準を決めていますけど、あれだって”客観的”ですよね、そのお偉いさんの基準なんですから。
いくら医療が発達したって、「死」というものが訪れるのに変わりはありません。
あとはそれが早いか遅いかだけの問題。
車を走らせ続けたら、いくら修理したって多少のガタが来るように
人間だって多少のガタは来るようになります。
検査の結果や、難しい言葉の羅列に惑わされ無いで、自分の身体を自分で感じること。
道具が便利になった分、自分の身体を動かしてという機会が減り、ますます自分への身体の気づきは減っていくかもしれません。
けれど、間違いなく身体はメッセージを発している。
こうでなければいけない、なんて実は1つも無いなんだ
私ね、最近まで
「身体に歪みがあってはいけない」と思っていました。
だから、人から基準を押し付けられた時に違和感を物凄く感じていたんですね。
けれど、そうじゃないんだって最近”体感”したんです。
だから、「歪みがあったっていいじゃない」になりました。
不健康や歪みと言った、そういうことまでも包んでしまうような、そんな身体やそんな人。
むしろ、不健康になったり、歪む勇気を持っている人。
健康かどうかなんて「気にならない」くらいの人。「気にしない」ではない。
それはつまり、在り方ベースのお話し。
この世の中に
「こうでなければいけない」なんて一つも存在しません。
だからこそ、自分の「感じる力」が大切だと思っています。
感じた事を思考し、言葉にし、そして自分の人生にしていく。
こんな素敵な経験が出来るのは
1人の人間につき、たった100年しかないんです。
その毎日をより良いものにしていくためには
他人の健康や基準に生きることなく、感じる力を養っていく。
それが何よりの財産になると思いますよ。
その一つの材料として「カラダ」があり
そこに表れたメッセージを伝える”手伝い”はします。
けど、最後は自分で。
私が一生伝えていたらその人は
「私の基準」で暮らすことになってしまいますからね。
自分の言葉で、思想で人生を創り始めた時から
哀しくも楽しい毎日が待っているのでは無いかと思います。
自分と向き合う相手の本質を常に想っていけたらと
今日も誰かに向き合いながら仕事場へと向かうのでした。
終わり。
東京学芸大学では、保健体育を専攻し、その後、日本ホリスティックコンディショニング協会ホリスティックコンディショナーの資格をとり、パーソナルトレーナーになる。活動歴7年。累計1000人以上のセッションを行う渋谷のパーソナルトレーニングジム「ととのえて、からだ。」の代表トレーナー。解剖学や生理学、栄養学など知識が豊富。