「それでは最後は深呼吸で終わりましょう。吸ってー、吐いてーーー。」
私が活動しているフィットネスクラブでも聞こえてくるセリフです。
今回は呼吸について。
腹式呼吸の効果と、実践的なやり方を紹介していきたいと思います。
呼吸を整えることで身体が整うことも十分に有りえます。生活の中で呼吸に注目してみては。
呼吸とはそもそも何か。
先ほどの
「それでは最後は深呼吸で終わりましょう。吸ってー、吐いてーーー。」
これは呼吸ではありませんね。
呼吸というのはその字のごとく「吐く」方から始まるんです。
呼吸の「呼」というのは呼ぶ。誰かを呼ぶ時は息を吐いていますよね。
吐けば体内の空気がなくなりますので勝手に必要な空気は入ってきます。
だからこそここでも大切なのは「吐く」ことです。それに意識を移していくこと。息を吐くことに注力していきましょう。
そしてその呼吸は肚(腹)で行います。
東洋の世界観では「丹田(たんでん)」とも言われたりしますね。一応お臍の下3寸(約9cm)と言われたりしますが私は「下っ腹でなんとなく意識が向くところ」という解釈をしています。
この丹田は膜の様な役割をしていると言われています。良いものを取り入れ、悪いものは弾く。これを使わないなんてもったいないですよね。
ということで肚(腹)で呼吸すべく、腹式呼吸をしていくとしましょう。
腹式呼吸の効果・メリットは?
腹式呼吸というのはシンプルに吐いた時おへそが引っ込み、吸った時におへそが膨らむ呼吸です。
最初はリラックスできる空間でやったほうが良いですが、慣れてきたらいつでもどこでも出来る様になるでしょう。
この腹式呼吸にはいろんな効果があります。それを紹介していきたいと思います。
腹式呼吸はリラックス効果がある。
有田氏は研究の中で、20分間の意識的な呼吸は尿中のセロトニンを高めるということを発表しています。(呼吸と心;佐藤二郎監修, メディカル・サイエンス・インターナショナルpp2-7, 2004.)
この中では、吐く、吸うの秒数は決めずに自分のリズムでゆっくりと20分間の腹式呼吸を行ったところセロトニンの分泌が高まったというもの。
このセロトニンという物質が不足すると、うつ傾向になりやすいと言われています。いわゆる「幸せホルモン」ですね。
内臓の調子を整える。
内臓の調子が整う理由としては、後述する神経のバランスが整うことにもよります。
内臓はそれぞれ交換神経と副交感神経に支配されていますので、神経のバランスが偏ってしまうとどちらか一方の内臓が過剰に働き、一方は萎縮してしまうのです。
神経系の働きが整うことでこの内臓の調子も整えることが出来るんですね。
特に消化器系は副交感神経の支配ですので、消化の悪さ等を感じている人は腹式呼吸での恩恵を受けることが出来るかもしれません。
ストレス等に!自律神経のバランスが整う。
自律神経のバランスというのは体の免疫システムの機能に関わります。この機能がしっかりしていることで様々なストレスに対抗していくことが出来ます。
精神的なストレスを感じると生理的には交感神経が過剰な状態になります。
その状態が続くと副交感神経の働きが抑制されてしまい、血流の悪化や不定愁訴、自律神経失調症等に悩まされます。ホルモンバランスとのも密接に関わるのが自律神経なので、女性特有の症状にも関わってくるものと思われます。
緊張状態が続いていて呼吸も浅いという人は交換神経優位の状態にあるので、黄色信号が。後述する腹式呼吸に取り組んで、副交感神経優位の状態にしていきましょう。
腹式呼吸の効果をより高める為に
ここからは実際に腹式呼吸に取り組んでいくことになりますが、そのポイントを整理したいと思います。
日常の中にちょっとでも取り入れ続けることが変化の秘訣ですので、ぜひ今日から取り入れてみてくださいね。
時間はどれくらいやれば良い?
それぞれのライフスタイルによって設けることのできる時間というのは違うでしょうから、「まずはやる」というスタンスが大切だと私は思っています。
理想を言えば10分以上はと思いますが、忙しい方はなかなか10分も静かに呼吸に意識を向け続けるのも大変でしょう。
最初は2,3分程度から始めてみてはいかがでしょうか。
ちなみに、吐く時間を吸う時間よりも長くする
のがポイントです。
先ほど紹介した有田氏の研究でも、より呼気を吸気よりも長くしたところ、尿中のセロトニンが増えたと発表されていますので、ぜひより効果を得る為にも、吸うより吐く。これを意識していきましょう。
例としては、6秒吐いて、4秒吸うといった感じです。
期間はどれくらいやれば良い?
健康にしろダイエットにしろ色んなお客様に聞かれる質問です。
本当にこれ、困ります。
だって、人間って、千差万別じゃないですか。
算数の問題が早く解ける人もいれば、時間のかかる人もいる。
学校の授業で「分かった!」となる人もいれば、家で何回も復習してやっと「分かった!」となる人もいる。
そんなの当たり前だろ!と思いますよね。でもなぜかダイエットや健康のことになると「これどれくらいやれば効果出るんですか?」と普通に聞いてくるんですよね。不思議でたまりません。
とにかく毎日取り組んでみてください。遅かれ早かれ効果を感じることの出来る日がくるはずです。
みんな結果を早く求めすぎ。
他に何か注意点はある?
最初は環境を整えてあげることも大切かもしれません。
・お気に入りの香り
・お気に入りの音楽
・お気に入りの場所
そういったところでやり続けることで習慣づけ、慣れてきたら日常的にもどんどん呼吸の意識をすれば良いと思います。電車の中だろうと仕事中だろうと呼吸はいつでも意識できます。常に側にあるものだからこそ大切にしたいものです。
ととのえて、呼吸。
自分の呼吸が整うこと。
相手の呼吸が整うこと。
二人の呼吸がぴったりと合うこと。
阿吽の呼吸ですね。
阿吽の「阿」は吐く、阿吽の「吽」は吸うという意味があります。
吐くから吸うまでがぴったりと合う。
古代インドの標準語であったサンスクリットでは
阿が最初の音で、吽が最後の音でした。
また、呼吸の「呼」は陰陽五行の始まりである「木」の五声に対応し、吸うとは内側へ内側へと息を吸い、体の中でエネルギーを内燃する行為。陰陽五行の最後である「水」の性質そのものです。
生理学的にも、東洋の智慧的にも、この呼吸というのは、何か大切なことだと表している気がしてなりません。
今日から、呼吸を変えること、してみませんか。
東京学芸大学では、保健体育を専攻し、その後、日本ホリスティックコンディショニング協会ホリスティックコンディショナーの資格をとり、パーソナルトレーナーになる。活動歴7年。累計1000人以上のセッションを行う渋谷のパーソナルトレーニングジム「ととのえて、からだ。」の代表トレーナー。解剖学や生理学、栄養学など知識が豊富。