膝の痛みは、どこから?
よくあるご相談として腰や膝の痛みについてがあるのですが、これはどこから来るのでしょうか。
実際にあった症例をもとに考えていきたいと思います。
この記事の意図としては、「正解」を出すというよりは、よりよいコンディショニングの為に「問い」を立てるものです。
膝のどこが痛みますか?
実際にあった中で一番多いのは膝のお皿の周囲の所です。
今回のケースでは膝のお皿の外側の痛みについて考えてみたいと思います。
実際にあった症例だと、30代の女性の方が、マラソンの練習をしていて、10km付近になると必ず膝が痛み出すということがありました。
西洋的視点に立って考えて見る。
運動というのはそもそも、全身またはその一部を使用し作り出される生理系の作用です。
その構成要素は複雑で、筋肉だけでなく、骨格、神経、心肺機能などにまで至ります。
リハビリテーションが行われる時に活躍されている理学療法士の方々。
一般的な評価方法としては、有名なShirley A.Sahrmannが述べているように
- 運動を運動学的な原則に基づき観察すること
- 筋の長さや筋力を評価することが含まれる
ということが挙げられると思いますし、臨床の現場でも使用されている概念かと思います。
痛みに関しては、その繰り返される運動パターンや持続する姿勢がどのようにして組織を変化させ、運動パターンにまで作用してくるか。
そして、その運動パターンが理想的な運動パターンとかけ離れている時に「痛み」として出てきます。
話が逸れたので、セッションの話に戻します。
その女性の、まずは姿勢をチェックしていきました。
すると、明らかに膝のお皿が内がわに向いていました。
スネの骨である脛骨の内反(内がわへの捻じれ)が認められました。
全体的な姿勢としてはスウェイバック、骨盤後傾気味です。
骨盤が後傾しているということは、筋の長さについて、大腿部後面の筋の長さが短い状態にありがちです。
脚長差をチェックすると、右脚が左よりも短い為、右脚についてはより大腿部後面が短縮状態にあると見られます。
大腿部後面の筋肉は骨盤の坐骨に付着しているため、それが短縮状態にあると、骨盤を後傾側へ引っ張ります。
骨盤が後傾すると、骨盤は開くため、その開く動きと共に骨盤にはまっている腿の骨も内がわへの捻りを伴いながら動きます。
すると、足ー膝ー股関節のラインが崩れ、体重を膝一点で支えるようになってしまいます。
その運動パターンで運動を続けると、膝への負担が増し、耐えきれなくなり痛みとして認識した、とこう解釈が出来るわけです。
筋肉を鍛えるという意味での筋トレをする
この場合行うこととしては
- 上手に股関節を外旋(外側に捻る動きのこと)すること
- それを片足の立脚局面において実施すること
- 体重の載せ方を変えていくこと
とこうなります。
具体的には、股関節の外旋筋であるお尻の筋肉やお尻の奥のほうにある筋肉を鍛えることです。
また、片脚立ちをし、その状態で膝を少し曲げるように腰を落とし、膝のお皿を爪先の方向へ揃える、ということを繰り返します。
要は、理想的な運動パターンを作る練習をしていくということです。
それを作り上げることで、物理的な負担が減り、運動中の生理系の作用も変化し、痛みが軽減するというこういう流れです。
体重の載せ方についても、今までは拇指球のみで支えていた体重を他の指でも、つまり足の裏全体で支えていくように工夫をしていく。
そうすることで、立ち方から膝が内側に入るのを防ぐというわけです。
一通りエクササイズや立ち方の改善をした後に姿勢をチェックすると確かに改善されていることが分かると思います。
これを継続してもらうことで、この骨格や運動パターンが「当たり前」の状態になってくるはずです。
ただ、このセッションでは私はこちらのほうを採用しませんでした。どうしてそうしたのかというのは後述します。
いつ痛むのか?
もう一度この女性の話に戻します。私が注目したのは、「いつ痛むのか」ということです。
この女性は慢性的に痛いわけではなく、「マラソン練習中の、しかも10kmすぎあたりから」という条件を持っています。
慢性的に痛い場合にはもちろん上述の方法で改善するかと思います。
しかし私の「直感」は違かった。
どういう視点でこの症状を観たのか、お伝えします。
生活習慣に変化は無かったか?
西洋医学に対するのは東洋医学です。
こちらの思想としては、このブログでも何度も登場している「陰陽五行」が有名ですね。
ので、そちらを使用してこの膝の痛みについて考えていきたいと思います。
まず、場所ですが、膝の外側になりますので、そこを通るのは胆のうの経絡です。
一応チェックとして足の薬指の外側をつまんだら痛みがあったので間違いなくこの「胆」にまつわる部分に変動が起こっています。
そしてその「胆」と表裏でつながりがあるのは「肝」の部分。これは五行でいう「木」の部分ですね。
この「木」というのは「筋」とも関わるので、変動が激しいとコリが強くなったりつることが多かったり。
相談に来ていただいた方もよくつるそうです。水をどれだけ飲んでもつってしまうと。
さて、なぜ「胆」の変動が起こってしまったのか。これを考えていきたいと思います。
「胆」「肝」「木」という流れで考え、これは何かイライラが募っていたのではないかと直感しました。
そのイライラが「木」の変動を起こし、荒波状態に。
そしてそれに「走る」という筋活動がプラス。
長い距離に慣れていないその方にとって10kmというのが心理的なボーダーラインに感じているよう。
そこを過ぎると「木」の荒波が抑えられなくなる。
それで痛みが出てくるのではないかと思いました。
それでは「木」に溜まるイライラって?
「木」って成長するイメージがありません?だから、自己成長を阻害されたり、のびのびとするところを押さえられたりするとストレスになり、「木」の変動が起こります。
こういうことをお伝えすると
「実は、今まで結構自由に会社でやらせてもらっていたのですが、会社全体としての売り上げが今期よろしくなくて、雰囲気が一変、売り上げを!という雰囲気になってそれがストレスですかね。」
そんなことを話してくれました。
そのストレス解消の為にも、走るのがすごく気持ちが良かったのに、と。
そうですね、「汗をかくくらい」運動をすると、「火」の変動が起こります。
「木」と「火」は生かす関係にあるので、「木」の荒波の分を「少しなら」受け取ってくれるんですよ。
ただ、今感じているストレスが強いらしく、その荒波を押さえられない状態に。それが今回の痛みに繋がったようですね。
人の体調がよくなるのも悪くなるのも
- 生理的
- 物理的
- 心理的
この3つの要素が絡みあう、でしたね。
ということはこの3つの要素で「身体だけでなく生活も調える」ことが大切です。
「木」の場合、
- 何かのびのび出来る時間や空間を作ること
- 新しいことにチャレンジしてみること
- 既存のことでも新しい発見をしてみること
- 汗をかく手前くらいの運動を朝にすること
- 酸味のあるものを食べること
こんな感じのことをアドバイスとしてはさせてもらいました。
一応「肝」のツボをしっかりと刺激したら「胆」も落ち着いたみたいで、片足ジャンプしても全く膝が痛くなくなりました。
後日談。
朝に近くの公園を散歩していたら、いつも風景になっていたものが目に飛び込んできて感動したようです。
そういう小さな幸せ、良いですね。
私はどちらも使います
この場合は東洋医学の見地からセッションを展開していきましたが、この後この女性には、先述の理学療法的な処方をしました。
つまり、痛みが取れた上で、更なる予防として、理想の運動パターンを身につける。
ということです。
そうすることで、構造的な問題も、生活そのものの問題も一緒にクリアにしていけますね。
私も散歩したくなってきたな、いつもと違うコースを。
新しい発見って、いつになっても嬉しいものですよね。
今日はどんな発見のある1日になるだろう。
わくわくして、職場に向かいたいと思います。
東京学芸大学では、保健体育を専攻し、その後、日本ホリスティックコンディショニング協会ホリスティックコンディショナーの資格をとり、パーソナルトレーナーになる。活動歴7年。累計1000人以上のセッションを行う渋谷のパーソナルトレーニングジム「ととのえて、からだ。」の代表トレーナー。解剖学や生理学、栄養学など知識が豊富。