私がセッションをする際に、人体のコンディショニングや、メンタルのコンディショニングの説明で用いるのが、陰陽五行という東洋哲学です。
名前が仰々しいので何だか怪しい雰囲気満点ですがそんなことはなく、昔から続く智慧です。
今回はその陰陽五行について私がどう観ているか、実際のセッションではどう使用しているのかを紹介したいと思います。
陰陽五行とは?
私が普段使っている陰陽五行の思想とは、一切の万物は陰と陽の2つの氣に属し、無限回転を行っているという陰陽の考えと、木火土金水という五つの要素の盛衰の関係でこの宇宙全ての現象を表そうとする思想のことです。
なんのことか、さっぱりですよね笑
でも、こんな図、見たことありませんか?
太極図というやつですね。
この一方が陽、もう一方が陰となります。
そしてこれが木火土金水の模式図です。
東洋医学等を勉強なさっている方は見たことがある図ですよね。
この思想が発展し
健康法として太極拳が
治療法として針治療や気功治療、漢方が
食事法として薬膳やマクロビ等、実は私たちの生活の身の回りに数多くその姿はあります。
その世界観としては「相対的」なのが特徴です。
「絶対的」と「相対的」な違い
絶対的な評価というのは、世界中で誰がいつ見ても同じ結果であることが特徴です。
西洋医学はその代表格ではないでしょうか。
病気になる→菌がいる→それを無くす(殺す)ことで病気を治す→投薬という治療方法を選択する
これが一般的な流れですね。
別にこれが「正しい」とか「間違っている」という話ではありません。
西洋医学という立場からしたらこれが正しいんですね。
そしてそれが「絶対的なもの」なので、他の方法は断じて「違う」「有り得ない」と切り捨てるのも特徴です。「絶対的」だからそれで良いんです。
ではここで頭を切り替えて。
東洋医学というのは相対的な世界観を持っています。
ので例えば、AさんがCさんを観た結果と、BさんがCさんを観た結果が違うことがあります。
でもそれはそれで良いのです。
そこには「間違い」は何もなく「違い」だけがあります。
病気になったり身体に痛みが出たりしたら、その見える現象=陽の部分から、どうしてそうなったのかという原因=陰を色んな観点から分析するのが特徴です。
科学には限界がある
もともと西洋で発達した科学というのは、この世を創造した神を讃美するために、その営みを出来るだけ数量化・数値化していこうという試みから出発しています。
この数量化・数値化出来るのには限界があって、やはり物質面に関わるものに限ります。
だから物質的な肉体にのみ焦点をあてて投薬や手術をするんですね。
それを逸脱してしまうと、何だかおかしなことになるのです。
ということは、西洋的な科学の手法では、目に見えない分野は説明出来ないということになります。
それについて執行氏も著書の中で、『目に見えない分野は本来、東洋哲学やギリシャ哲学によって説明されなければ、真実の姿に近づくことが出来ない』と、数万冊に及ぶ読書経験から指摘しています。
自然と仲良くなりたかった東洋人
対して東洋の科学というのは、目に見えないものはそのままにしておいて、むしろそれを受け容れ、上手に付き合っていくことを大事にしようという方針で発達しました。
目に見えるものと見えないもの。それらが陰と陽という思想を生み、『論語』に代表される四書五経が「科学として」生み出されます。
考えとしては、目に見えないものは確かに存在するんだけど、我々には「感じる=観じる」ことしか出来ないからそれと上手に付き合っていくことにしよう、という感じですかね。
となると『論語』は、目に見える範囲だけではない「礼儀」を大切にし、人間関係その他を良好にしていくためのエッセンスがまとめられている「礼」についての科学書ですね。
東洋哲学=波動?
先ほどの引用で『目に見えない分野は本来、東洋哲学やギリシャ哲学によって説明されなければ、真実の姿に近づくことが出来ない』とありました。
この中の「ギリシャ哲学」は、ニュートンやデカルトから科学的に発展し、現代では量子力学という分野が存在しています。
量子力学の祖であるニールス・ボーアやウェルナー・ハイゼンベルグ、マックス・プーランク等が有名な学者達ではないでしょうか。
その量子力学というのはこの世をエネルギーの波で捉え、それを「波動」と言ったりもします。
自己啓発本なんかに登場する「引き寄せの法則」なんかもこの波動のことですよね。
とにもかくにも、目に見えないものに関してはこの東洋哲学とギリシャ哲学からの説明が一番真実に近くなるということです。
別にどちらが正解とかそういうことではないと思います。「間違い」ではなく「違い」があるだけです。
なぜ波動がオカルト扱いされるのか
たまにこの波動をオカルト扱いしている人や、マクロビや気功などを宗教だという人を見かけます。
私はすごく哀しいです。
ただ、そういう扱いを受けることになってしまう理由がちゃんとあるんです。
例えば波動の話で言えば、先述の話からこれは目に見えない分野=東洋哲学という関係性から「相対的な世界」と言えます。
となると
「波動が絶対正しい!」という態度は残念ながらオカルト・宗教的な扱いを受けてしまっても仕方ないと思うんです。
陰陽五行や波動というのは主観的な世界観です。
扱うものが「相対的」なのに、それを扱う人が「絶対的」だったら?おかしなことになってしまいますよね。
例えいくら理論を重ねたとしても「相対的な世界観」なんです。
相対的な世界では、良いも悪いも正しいも正しく無いもありません。全ては「確率として存在しているだけ」です。
量子力学の祖であるニールス・ボーアも「この世には不確定なもののみが存在し、我々の意識がそれを確定させる」と述べています。
マクロビや気功も同じ。その根底には東洋哲学があるので、どれも相対的な世界観を持っています。それなのに「これが正しいからこれをやって!」というように絶対的なものを押し付けようとする。
その態度が宗教的だと言われてしまう理由だと感じます。
ご利益に弱い私たち
もちろんこれは、受け手側にも問題はあるんですよ。
例えば引き寄せの法則とか気功とか何でも良いんですが
「何これ!効果全然ないじゃん!嘘つき!」
となる人が居ますよね。
願いが叶った!とか、治った!という人もいるのにどうしてなんでしょう?
で、これなんですけど、最初の図覚えていますか?
これです。
気功治療でも波動治療でも良いのですが、何かしら治療を受けたとしますよね。
それって、「目に見えないもの」だし「自分の力では無いもの」なんですよ。
ということは陰の部分ですね。
この太極図、陰「だけ」では完成しないんですよ。
大切なのでもう一度。
この太極図は、陰「だけ」では完成しません。
陽の部分もあって初めてこの図が完成するじゃないですか。
ということはですよ。
「目に見える世界で、実際に自分の力で行動する」ということが合わさって初めてこの図が完成するということです。
そうすることが治療を完結することになりますし、先述した引き寄せの法則も完結しますよね。
ここの点を抜かして、ただただ見えない世界の話しばかりしているから宗教だオカルトだと騒ぐんですよ。
そんな見えないご利益に固執してないで、「今」をしっかり見つめて行動し続けようということですよね。
そうです。行動あるのみです。
他力本願だけではなくて、自力も必要です。当たり前ですよね。
持ちつ持たれつがこの陰陽の関係で大切なことです。
そうした時に初めて太極図の無限回転が始まります。
実際のセッションではこう使っています
実際のセッションではすごくシンプルに使用させて頂いています。
今まで難しく考えていたのですが、教えを受ける内にどんどん紐解かれ、シンプルになっていきました。今ではそれを解剖学的な知識とくっつけてセッションを行っています。
身体として「見える」部分=陽
考え方・観方の「見えない」部分=陰
今まで説明してきたように、どちらも必要だなと観じるので解剖・生理学的な説明も、東洋哲学的な説明もセッションの中ではしています。
・身体のどこかが痛い
・精神的に参っている
という2パターンについて最近のセッションの例を見ていきたいと思います。
身体のどこかが調子が悪い
指の腱鞘炎がひどいの、というのはYさん。
どれどれと、2つのポイントを観ていくことにしました。
・どこが痛むのか
・どういう使い方をしているのか
です。
まずはどこが痛むのか。腱鞘炎になっているのは親指のラインでした。ということは五行で説明すると「金」にあたります。「肺・大腸」等の臓器も関わるところ。
便の様子は?と聞くと、便秘が続いているそう。なるほど。
この「金」というのはストレスの中でも緊張を敏感にキャッチするところ。日頃の生活でどんな緊張があったのかを質問しました。
が、ここでは一度置いておいて身体ベースのでお話をしていきたいと思います。
さて次に、どういう使い方をしているのかをチェックするために、Yさんに手を握ってもらいました。パーからグーにしていきます。
するとYさん、末端からではなく、付け根から動かしています。
余談ですが、ここから動かしている人は非常に多いです。
なるほど、ここも関係しそうです。
ということで治療としては下記の様な感じに。
(1)「金」に関わる経絡の流れを穏やかにするためにストレッチを行う。(参考→ 肩こりだけではなく便秘や肌荒れにも!肩のリリーストレッチでスッキリ爽快♪)
(2)指先からグーをする練習をして神経-筋の視点からも予防に徹する。
2週間経ち、すっかり腱鞘炎が良くなった様子でした。嬉しい限りです。
しかし実は、身体ベースだけではない「おまけの話」があるんです。
メンタル面でやられている
先ほど、『この「金」というのはストレスの中でも緊張を敏感にキャッチするところ。』というお話しをしました。
人の精神が肉体に及ぼす影響というのは本当に計り知れません。
ということで、Yさんにどういった緊張が普段の生活であったのかを聞いてみました。すると。
・ご主人が病気になって看病をしなくてはいけなくなった。
・割とマイペースな方なのに自分のペースで色々と出来ない
・息子たちには頼りたく無いから自分でやらなきゃいけない
なるほど。
自分のペースで居られず、看病しなければいけない状況に。そしてそれを誰にも頼らずに一人で背負いこんでいる様子。
かなり緊張しますよね、こういう生活。大丈夫、と言っていても身体はそうは言っていないですから。
ということで。
「Yさん、少しでも自分らしいペースに戻るために、ここはひとつ、誰かに少しだけおねがいしてみてはどうです?自力も必要ですが、他力も忘れてはいけないですよ。」
と、太極図を描きながら、自力と他力、どっちも使うことでこの図は完成して廻り始めますということをお話ししました。
そうしたらYさん。後日談ですが。
「あれから早速息子夫婦にお願いして、週に2日程来てもらえることになりました。今ではなんで頼まなかったんだろう?と思うくらいです。気が楽です。」
なかなか良い感じに廻り始めたみたいですね。嬉しいなあ。
人間関係の観方も陰陽五行で変わっちゃう。
私自身の話しなんですけど、この観方を身につけてから、人の身体を観るのも、人間関係を観るのも、物事を観るのもすごーく、楽になったんですよね。
この東洋の哲学、東洋の智慧に出会えて良かったと思っています。
昔の人は、この陰陽五行というものを政治や農業等にも利用していました。人は自然の一部と考えているので、人間関係すらもこの哲学で紐解くことが出来るんですよね。
もちろん、観方の変化「だけ」では何も解決しません。それは陰の部分だから。
実際にはその観方を通じて何かを思い、きちんと自らが行動するということが大切になります。
けれど、その行動の、ちょっとしたヒントがあると、有難いと思いませんか?
昔の人の智慧って、本当に素晴らしいと思います。
その魂に少しでも触れ、身体も、心も楽になるこの哲学を、健康に、仕事に、人間関係に多くの人が役立てる様、小さな縁からお伝えしていこうと思います。
人間関係の詳細については、また時間がありましたら書きますね。

東京学芸大学では、保健体育を専攻し、その後、日本ホリスティックコンディショニング協会ホリスティックコンディショナーの資格をとり、パーソナルトレーナーになる。活動歴7年。累計1000人以上のセッションを行う渋谷のパーソナルトレーニングジム「ととのえて、からだ。」の代表トレーナー。解剖学や生理学、栄養学など知識が豊富。