骨盤を後傾していると腰痛の原因等になると聞きますが、その原因は何なのでしょうか?
というか、そもそも骨盤が後傾しているとはどういうことなのでしょうか?
今、いろんな所で聞く様になった「骨盤」のこと、改めて考えていきたいと思います。
骨盤後傾とはどんな状態?
まずは骨盤後傾とはどんな状態なのかを見ていきたいと思います。
百聞は一見に如かず。まずはご覧下さい。
これが骨盤ニュートラルの状態で立っています。
そしてこれが骨盤後傾の状態です。
明らかに違うのが分かりますよね。
骨盤が後傾すると一緒に猫背になってしまうのも特徴です。
骨盤後傾に関わる筋肉は?
骨盤が後傾しているということは、背骨が屈曲し、膝関節も微妙に屈曲し、など身体に微妙な変化が起こります。
変化が起こる、ということは、それに関わる筋肉が「緊張」もしくは「弛緩」するということです。
骨盤後傾に関わる部位としてはももの裏の筋肉が挙げられるでしょう。
ももの裏の筋肉が過剰に緊張していると、骨盤が後ろに引っ張られてしまいます。
ももの裏の筋肉が過剰に緊張する理由は、神経-筋、関節、内臓、精神的ストレス等様々あります。
そして、ももの裏の筋肉が緊張しているということは、ももの前の筋肉は緩んでいるということです。
骨盤後傾・前傾の見分け方は?チェック、評価方法はこれ!
そんなこと言ったって私は骨盤後傾しているのかどうかそもそも分からない!という方もいるかと思いますので、ここで簡易的なチェック方法をご案内。
有名なチェック方法ですが簡易的なテストとして用いやすいのでご紹介します。
このように下っ腹に手を当てます。
横から見た時に、その手が地面に対して垂直になっていれば骨盤がニュートラルの位置にあります。
これは地面に対して身体側に倒れていますよね。これが骨盤後傾です。
逆にこれは骨盤が過剰に前傾しています。
骨盤後傾の原因とは?
骨盤が後傾してしまう原因にはどのようなものがあるのでしょうか?
場合に分けて出来るだけ詳細に紹介したいと思いますが、本当に千差万別に原因は存在します。そこだけご了承ください。
座っても立っても骨盤が後傾する場合
座っても立っても骨盤が後傾する場合には、「姿勢が保てない状態である」ことが一番の改善ポイントになります。
こういう方の場合は、筋トレももちろんやるのですが、内臓の機能改善が必要な可能性があります。
どの内臓の機能改善に一番注力するかというと「腎・膀胱」です。
ここは、姿勢を保つために必要な部分です。五臓六腑の中で「久立(きゅうりつ)」つまり、「久しい(長い)時間立つ」ことを担当しています。
ここが弱いと同じ姿勢を保つことが出来ずに崩れてしまいます。
・すぐに足を組みたくなる
・電車でも姿勢を崩して座ってしまう
・立つときは片足に体重を寄せて立つ
古くより東洋医学では、人の身体は「内臓-脊柱-筋肉」というつながりがあると言われており、骨盤の傾きには内臓(とくに腎臓と膀胱)も関係している可能性が指摘されています。この内臓の機能を関連する筋肉の働きを活性化させることによって改善する可能性があります。
立ち姿勢では骨盤はしっかりしている場合
立ち姿勢でしっかりしている場合には、骨盤帯そのものを見ていきます。
先ほどの場合、立っても崩れるということは足も含めて見ていかなくてはならないからです。
なぜか。
立位の場合には、一番重力のかかるポイントは「足」ですよね。
対して、座位の場合には「骨盤」です。
ですので、立っている時に骨盤はしっかりしているということは「足」に機能異常は無いということなんです。(細かく見るとある方も居ます)
ということでここでは骨盤帯に焦点を当てるんですね。
・骨盤帯を形成している筋肉のバランスが崩れたことで起こる
・骨盤帯に関連する関節の機能異常によって起こる
これらが原因となります。
もちろん人によってどれからによるものなのかは違います。実際のセッションではしっかりこれのどれから来るものなのかを突き詰めて、その改善のエクササイズを提案しています。
骨盤後傾は腰痛等の諸症状の元!
骨盤後傾に限らず、身体の崩れというのは腰痛等の症状の元になります。
その他にも、
骨盤が後傾する
↓
骨盤が開く
↓
股関節が内旋する
↓
膝のお皿が内側を向く
という流れから、運動で膝を痛める方も多いです。実際のセッションでも、膝の痛みという主訴で来ていただいた方が、骨盤の使い方を改善していったら痛くなくなったということがありました。
痛みのある部位は痛みのある部位が原因で起こるということはまず無いようです。
骨盤後傾の治し方は?
それではここからは、実際にどのようにして骨盤後傾を自分で治していくのかをご案内します。
・ストレッチで
・筋トレで
・身体の使い方のポイントを改善
この様な視点から改善対策の案内をしていきたいと思います。
骨盤後傾矯正ストレッチは?。
骨盤後傾の際に緊張する筋肉は先述の通り「ももの裏」でしたね。
ということでここを伸ばしていきたいと思います。
仰向けになって、タオル等を足に引っ掛けて引っ張っていきます。
一番気持ち良く伸びるところで深呼吸を3回ほど。
左右とも行っていきます。左右で「硬いな」と感じる方があればより時間や回数をかけて行っていきます。
骨盤後傾、椅子を使った筋トレで改善出来るの?
次に椅子を使って筋トレをしていきたいと思います。
ここでの目的は2つ。
(1)骨盤を立てるという感覚を染み込ませる
(2)骨盤を適度に前傾させるべく腸腰筋に刺激を加える
です。
それらを満たすトレーニングがこちら。
このように、椅子に座り、万歳をしていきます。すると骨盤が自然に立ちます。
この状態で片足を上下しましょう。
手を下ろした状態での上下よりも「上げづらい」のがわかるかと思います。上げづらくて正解なのでそのまま続けてください。
左右各10回ずつ。最初は1セットで大丈夫ですが徐々に3セットまで回数を増やしていきます。
骨盤後傾の人は股関節を外旋するのがポイント!
先ほどの説明で、「骨盤が後傾している人は股関節が内旋する」ということを話しました。
そこで、股関節外旋を癖付けるトレーニングをしていきます。
O脚矯正トレーニングでも紹介したものです。
参考→ O脚の治し方徹底解説!立ち方矯正から簡単エクササイズまで!
このように壁に背中をつけて、足を45度開きます。
「頭とかかとをつけたまま」骨盤の部分を前へと押し出していきます。
あまり無理の無い程度に押し出して戻すのを繰り返しましょう。
骨盤前傾を意識する方法は?
骨盤の後傾が癖づいている人の中には「骨盤を前傾する感覚がわからない」という方が居ます。
そういった時におすすめなのがドッグ&キャットというエクササイズです。
最初は「背骨まで曲げ伸ばし」して大きく身体を扱っていきます。
徐々に小さくして最終的に骨盤だけというように持っていきます。
何事も継続です。
他にもエクササイズがあるので参考にしてみてください。
骨盤後傾を治すためのトレーニング用品はある?
骨盤後傾を改善するには、ここまで紹介してきたトレーニングを継続することが大切です。基本的には何かトレーニング用品を使用することは必要はないと思っています。ですが、何か良いトレーニング用品がないかとお客様から聞かれることがあります。その時におすすめするのは、らくゆら練座という商品です。
こちらはしっかり実験で効果が検証されていて、使っている方で効果が見られることもあるので、どうしてもと聞かれたときにはおすすめしています。ただ、基本的には、色々なトレーニング用品を試すよりも、ここまで紹介したトレーニングをしっかり継続することが大切です。
ととのえて、骨盤。
ここまで骨盤後傾の原因とその対策の紹介をしてきました。
もちろんこれは一朝一夕で治るものではありません。
しかし、治らないものでもありません。
それは、「継続出来るかどうか」がポイントです。
骨盤の元々の位置を身体に染み込ませていくその時まで
エクササイズやストレッチ、そして普段からの意識が継続出来るか。
身体をととのえるということは、そういうことです。
骨盤がニュートラルになれば
・姿勢がきれいになります。
・いろんな動作が楽になります。
・結果、生活が良くなります。
骨盤後傾のこともそうですが、他の身体の痛みもそう。
何かの「メッセージ」をあなたに送っている証拠です。
少しでもその「通訳者」として、お伝えできたら。
それが私の役割でもあると思っています。
セッションは、一方通行ではありません。私とあなた、どちらの協力も必要。
その結果、良い身体というのが創られていくわけです。
身体を通して何かお手伝いができそうであれば、どうぞこんさんを使ってあげてください。
共に自分の身体を毎日向上させていけるよう、精進して参りましょう。
☆「骨盤」のことをより理解したいあなたはこちらです。
骨盤の歪みを治す方法を解説!チェックから体操、ストレッチ等すぐに出来ることまとめ!
骨盤を立てるとは?座り方は?歩き方は?ランニングやヨガでのポイントも!
監修医師プロフィール
佐藤典宏
1993年 九州大学医学部卒。外科医として研修後、米国ジョンズホプキンス医科大学に5年間留学し、がんの分子生物学を研究。2012年より産業医科大学 第1外科。現在、産業医科大学第1外科 講師、外来医長。1000例以上の外科手術を経験し、日本外科学会、日本消化器外科学会の専門医・指導医の資格を取得。発表した研究論文は200編あまり。がん患者さんに役に立つ情報を提供すべくブログ「がんをあきらめない人のための情報ブログ」を開設。著書に『ガンとわかったら読む本』など。

東京学芸大学では、保健体育を専攻し、その後、日本ホリスティックコンディショニング協会ホリスティックコンディショナーの資格をとり、パーソナルトレーナーになる。活動歴7年。累計1000人以上のセッションを行う渋谷のパーソナルトレーニングジム「ととのえて、からだ。」の代表トレーナー。解剖学や生理学、栄養学など知識が豊富。